小布施インキュベーションキャンプ(OIC)で、新しい自分と出会う。
OICは、東京や小布施をはじめ、全国各地から多様な立場の仲間が集まり、それぞれが心のうちにある火種を見つけ、その火種を実際の行動や事業という形にしていく「全員が実践者となる」プロジェクトです。
都市と自然とのあいだにある里山「小布施町」は、人の創造性を引き出しやすい環境なのではないかという仮説から、小布施町及び、慶應義塾大学SDMと協働で企画・開発したプログラムです。役場、大学、地方銀行、都心のビジネスマンなど多種多様な人びとを巻き込みながら、“対話”を通じて、様々な形の“事業”を生み出してきました。
プロトタイプとなるOIC 0期は、長野県小布施町・東京・山中湖にて2015年に開催され、以降1期〜9期のOICを実施。
コロナ禍となった2020年の5期からオンラインをベースとしたプログラム構成に刷新し、時間的・距離的制約を超えた、対話と実践を繰り返してきました。2023年現在は、小布施でのリアルの対話の場も一部復活させ、ハイブリッドな構成で実施しています。
スタイルはオンライン、そしてハイブリッドへと変化しましたが、根底となるコンセプトや考え方や実現したい世界は、それまでの対面で開催していた頃から変わりません。ここでは、その根底となる想いをご紹介します。
閉塞感を覚える現代では、一人ひとりにとっての働く意味やしあわせの在り方が問われています。そんな中で必要になるものは、自分自身の「新たな可能性」を見いたす創造力だといえるでしょう。これは、言い方を変えると「イノベーション」と言われるものかもしれません。しかし、私たちは目の前の日常に追われ、それを見つけることが困難になっています。
そして、見いだせなくなっている大きな理由は、自分自身で知らぬ間に設定していたものの見方や常識=「枠」の中しか見えなくなっていることにあると思います。「新たな可能性」とは、自分がつくってしまっている「枠」から外に出てみて、内側を見直してみることがきっかけで、ふと、気づくものなのです。
そこで、私たちは、どうすれば「その枠=境界を超えられるのか」を考えました。
その答えが、「対話(ダイアローグ)」を通じて、自分と他者、そして世界とに関わることであり、それを具現化した「小布施インキュベーションキャンプ(OIC)」です。
• 現実を生きるんだ、と言うことを自分の中心に揺るがなく据えている私が居ます。全ての起こることについて、逃げも隠れもせず、扱う覚悟ができたのでしょう。
• 職場において、思ったことを素直に出せるようになったし、どう思うかを聞けるようにもなりました。お互いの違いを認めつつ仲間として事業を組み立てていくプロセスを楽しめています。
• 行動を起こすことに躊躇っている自分に気づいた上で、恐れながらも行動を起こすようになった。(これまでは躊躇って行動しないままにしていることが多かった)その結果、仮にうまくいかなかったとしても、その結果を受け入れるようになった。
• 人との関係を“相手に飲まれるか、相手を取り込むか”の二択で考えていたと気付いた
• 共感の連鎖が、何度もセッションの中で起きました
• 言葉によって、自分の行動を制限していることに気付いた
• 自分自身が持っていたものを再発見しました
• 今いる場所に捉われない思考が大事なのだと気付きました
• 自分に“許可を与える”ことの大切さを学びました
• ありのままの自分でいることで、“ゆらぎ”や“兆し”、“感じたこと”に対して素直になれました
OIC0期~9期に参加した人は全部で129名。 住んでいる場所、所属する組織や職種は多様です。
・大手情報サービス会社/営業職
・老舗菓子メーカー/事務職
・大手不動産ディベロッパー/企画職
・地方銀行/営業職
・地方自治体/企画職
・病院/作業療法士
・会計専門学校/事務職
・研修会社/企画営業職
・教育研修/個人事業主
・システム会社/システムエンジニア 他
そんな彼らから一様に、このような驚きの声が聞かれた理由は、「日常」とは違う、境界を超えた体験ができたことにあります。
残念ながら今のままの状態では、「日常」から新たな可能性を見つけることが困難です。
しかし、ちょっとしたきっかけと経験を経ることで、誰もがその可能性を見いだせるようになります。
「新たな可能性」を見つける創造力を養うために、「境界を超える体験」をデザインすることが重要という仮説のもと構築されたOIC。
このプログラムを企画する上での土台となった仮説・考え方、およびコンセプトお伝えします。
まずは「境界」はどこにあるのか。
そのヒントとなるのは「中央」と「地方」です。
現代の常識が集まる「中央」と、そこから距離を置き、個別のルールを持つ「地方」。普段働く場所を離れて、2つの場所を行き来することが、「境界を感じる」ことにつながります。そこに「業種も職種も異なる人たち」が集まって、自由に対話を行う場づくりを行いました。
では「中央」と「地方」にどのような場があるのか。
私たちは思考と共に感性も重要と考え、「都市」「里山」「自然」というステージを用意しました。
自然(森)の中でその感性の感度を高めるプロセスを経た後に、里山において、その感性と思考をつなげるプロセスを経て、都心部での事業モデル構築につなげます。
今回は「里山」として長野県小布施町に協力いただきました。小布施町は新たな町づくりに意欲的な町で、今回のチャレンジに同意いただき、研修の場を提供いただきました。また「自然」では北海道・苫小牧の森林を活用して”感じる”体験を深めます。
森で行われるのは、忙しい日常から触れ、静かに内省する時間を持つことに始まります。
森の中で五感を開き、そこで受け取るさまざまなサインから、日常の思考の枠や囚われから出ることができます。
そして、参加者との深い対話の繰り返しを行い、自分自身の原点にある志や想い、大切にしている価値観などの再発見につながっていきます。
対話とは、本来の自分を取りもどすための行為です。
自分と対話することで、自分の内側に眠っているものに気づき、他者と対話することで、自分がつい握ってしまっているものの見方に気づき、世界と対話することで、知恵にあふれる世界からのメッセージを受け取れるようになります。
これらすべては、ともに行う協働行為であり、その行為を通じて、人はそれらとのつながりも思い出します。
自分と、他者と、世界とつながりなおすことで、自分の行動への自信は高まり、安心して前にすすんで行けることになります。
実際の事業や行動などの具体化をするうえでベースとした考えは「共創」です。
変化するスピードが非常に早く、価値観が多様化している現代において、誰か一人の力だけ流れを変えることは困難です。
これから変化を生むことができるのは、多様な人と手を取り合い、多様な考えを集約して共に新しい価値を生み出せる「共創」の力です。 ただ、これまでと同じような物事の枠内にいては、変化を生み出す「共創」は生まれてきません。
真の「共創」を生む力となるのは、境界を行き来しながら、自分と他者、世界との対話を通じて本来の自分を取り戻し、その自分を通じて社会との接点で行った実践から生まれます。そのため、プログラムのコンセプトを「対話」「行き来」「実践」の3つと置き、まさに実践してまいりました。
自分と他者、世界との対話(ダイアローグ)。そこにあるものを知り、そのままを受け入れ、そこから生みだす。
どこの「場」に偏ることなく、「場」を「行き来」して見えてくるものから生みだす。
「現実との接点」での行動からしか世界は変わらないことを知って、実践し続ける。
こうした背景、考え方をもとに、5ヶ月間、全7回のオンラインとリアルのハイブリッドなプログラムを実施しています。
イノベーションといえば、実際の行動によって起きることを指すことが通常ですが、OICでは、その行動を引き起こす土台となる「心のイノベーション」にも着目しました。行動のイノベーションが起きるためには、まずはその土台となる心のイノベーションを起こすことが前提だと考えたのです。対話を通じて、心のイノベーションを起こし、その場で立ち現れた着想を現実・事業へとつなげる行動のイノベーションを実施していくサイクルを何度も繰り返し、定着させていくことを目的としてプログラムを構成しています。
こうしたプログラムを通じて、参加者からは、「小栗八平衛商店」という活動拠点の運営、小商い(おぶせっと、フレーバーウォーターなど)の商品企画・販売、東京で実施した移住・起業セミナー「小布施よそ者会議」、千葉で小布施の産品を販売する小布施マルシェ、ヘルスツーリズム「小布施リトリート」、など、大小様々な事業が生まれています。また、終了後、各自の所属法人・コミュニティ・事業において、開始前では予想だにしなかったキャリア、人生へとそれぞれが踏み出しています。